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Why Portland?

全米で住みたい都市No.1
ポートランドに惹かれる理由

オレゴン州ポートランド。場所は、シアトルで有名なワシントン州とロサンゼルスやサンフランシスコという大都市があるカリフォルニア州の間。サードウェーブコーヒー※発祥の地といわれ、クラフトビールやワイン、地産地消のファームトゥテーブル※がしっかりと暮らしに根付いていて、ここ数年、日本でも人気の街です。100年前の建物をリノベーションするようなDIY精神があり、 自転車フレンドリーで環境意識が高い人たちが多く暮らす「全米で住みたい都市No.1」。実際にブルックリンやロサンゼルスから移住してくる人も多いそう。では、彼女たちがポートランドに「住みたい」ほど惹かれる理由はどこにあるのでしょう?ポートランドという街を通じて、歳を重ねてきたわたしたちが、これから生きていくヒントを探してみたいと思います。

※サードウェーブコーヒー
インスタントコーヒーなどで家庭に広まったのがファーストウェーブ、スターバックスに代表されるシアトル系深煎りコーヒーのセカンドウェーブにつづく第三のコーヒーブームがサードウェーブ。原産地や農園の特定やコーヒーづくりのプロセスが丁寧に管理されたコーヒーで、ポートランドの「スタンプタウンコーヒー」がその先駆けと言われています。

※ファームトゥテーブル
地元の農家(=ファーム)から、家庭やレストランの食卓(=テーブル)へ、というアメリカ版「地産地消」の意味。ポートランドでは「ファーマーズマーケット」も頻繁に開催されるなど地元産の食材を使うことに意識が高い。そんな食を家族や気のおけない仲間たちと過ごす「スモールギャザリング」。ひとつのテーブルを囲む大切な人たちとの集いから、ささやかだけど豊かな時間が紡がれていきます。

セカンドキャリアをかなえる自由な気風

ポートランドは人口60万人のオレゴン州最大の都市。でもそんな都心から、車でほんの15分も走れば大自然の風景に触れることができる。これがいいところ、とはポートランドに移住してきた人たちからよく聞かれる声。 大都市から移り住んだ人たちはポートランドに暮らすことで、次のキャリアを考える人も多いようです。小さなコミュニティで隣人が助け合う、ネイバーフッドの精神が息づいているから子育てがしやすく、自然がすぐ近くにあるという理想的な住環境。なにか新しいことを始めたいと思わせる風土。決して無理をするのではなく、身の丈でチャレンジできる街なのです。

“KEEP PORTLAND WEIRD”(ポートランドを風変わりにし続けよう)という有名なスローガンがあるように、リベラルでパンクな人も多いポートランド。今回取材で訪れた陶 芸家のアトリエにポスターが貼ってありました。そこに書かれていたのは“WE WELCOME”の言葉につづき、“ALL RACES/ALL RELIGIONS/ALL COUNRIES OF ORIGIN/ALL SEXUAL ORIENTATIONS/ALL GENDERS/ALL ABILITIES”(「われわれは歓迎する~すべての人種を、すべての宗教を、すべての国籍を、すべての性的指向を、すべての性別を、すべての能力 を」)。 毎年、3月8日の国際女性デーに合わせてポートランドで開催されるのが「Women’s March」。マーチへの参加をはじめ、女性団体への寄付、平等、ダイバーシティについて職場やグループで考えるなどの活動が行われます。日本ではカフェ や食など表面的なことに注目が集まりがちなポートランドですが、実際に暮らしている人たちは皆問題意識を持っています。そういった意識がセカ ンドハンドを 買うことや、地元食材を使用するファームトゥテーブルにもつながっているのです。

新しいことを始めるには、
新しいものや場所は必要ない

この地では、セカンドハンド(中古)を使うということが当たり前。それはレコードでも(アナログのレコード屋さんもいっぱいあります)、服でも、家でもそう。その代表格がパールディストリクトにある書店「パウエルズ・シティ・オブ・ブックス」。インディペンデント書店としては世界最大と言われています。この本屋さんの特長は新刊本と中古本が隣に並んで売られていること。どちらを選ぶかは本人の自由という訳です。もちろん立ち読みもOK。 それどころか床に座り込んで読書に耽るのも可、の大らかさが魅力です。新しいカフェも、その多くが個人オーナーの開業で、ほとんどが古い建物を上手に活かしたDIY。使用されるテーブルやチェアももちろんセカンドハンドです。そんなリサイクル製品を集めたのがミシシッピアヴェニューにある「リビルディング・センター」。ここには取り壊された家屋から出たドア、窓などの建具や金具、柱などありとあらゆるものが集められています。古いものを大切にする、ということはポートランダーにとって普通のこと。 日本でも住宅のリノベーションや中古販売のネットショップが人気のように、従来のスクラップ&ビルドという視点から考え方が変わってきているのかもしれませんね。